映画『ファンタスティック Mr.FOX』に登場する ローストチキン レシピ
はじめに
今回は、ウェス・アンダーソン監督による珠玉のストップモーションアニメーション、映画『ファンタスティック Mr.FOX』に登場する、なんとも美味しそうな「ローストチキン」に焦点を当てます。
この映画の中で、主人公であるキツネのフォックスさんは、家族のため、そして自身の「野生の本能」を満たすために、人間の農場から家禽を盗むことをやめられません。特に、農場主ボーギスの養鶏所から盗み出すローストチキンは、こんがりと焼かれた皮とジューシーな肉が見る者の食欲をそそる、非常に印象的な料理として描かれています。
映画の独特な世界観の中で、その見た目の美味しさが際立つローストチキンを、ご家庭で再現するためのレシピをご紹介します。
材料
(作りやすい分量)
- 鶏丸鶏: 1羽 (1.2〜1.5kg程度のもの)
- 塩: 大さじ1〜1.5
- 黒胡椒: 小さじ1
- ハーブ (ローズマリー、タイムなど): 数枝
- にんにく: 2〜3かけ
- 玉ねぎ: 1/2個
- レモン: 1/2個
- オリーブオイル または 溶かしバター: 大さじ2〜3
- お好みで: じゃがいも、にんじん、パプリカなど (鶏肉と一緒に焼く用)
作り方
映画のローストチキンをイメージしながら、丁寧に焼き上げてみましょう。
- 鶏の下処理:
- 鶏丸鶏の内臓があれば取り除き、流水で丁寧に洗い流します。特に内側をしっかりと洗ってください。
- キッチンペーパーなどで鶏肉全体の水気を、外側も内側もしっかりと拭き取ります。水気が残っていると、皮がパリッと仕上がりにくくなります。
- 下味をつける:
- 塩と黒胡椒を混ぜ合わせ、鶏肉全体に満遍なくすり込みます。特に厚みのある部分や、皮の下にも軽く指を入れて塩をすり込むと、味が均一に入ります。
- 香味野菜を詰める:
- にんにくは皮をむき、玉ねぎとレモンはそれぞれ4等分程度に切ります。ハーブは枝ごと用意します。
- これらを鶏のお腹の中に詰めます。ハーブの香りが肉に移り、より風味豊かに仕上がります。
- 形を整える:
- 鶏の足はタコ糸で交差させて縛ると、焼いている間に形が崩れにくく、見た目も綺麗になります。手羽先も胴体に沿わせるように軽く縛るか、楊枝で留めると良いでしょう。タコ糸がない場合でも、詰め物が飛び出さないようにするだけで問題ありません。
- 焼く準備:
- 天板にアルミホイルを敷き、その上に網を置きます。鶏肉を網の上に腹を上にして乗せます。網を使うことで、余分な脂が落ち、下側も皮がパリッと焼きやすくなります。
- お好みで、鶏肉の周りにカットしたじゃがいもやにんじんなどの野菜を並べても良いでしょう。野菜には軽く塩、胡椒、オリーブオイルを絡めておきます。
- 焼き:
- 200℃に予熱したオーブンで、まず30分焼きます。
- 一旦オーブンから取り出し、溶かしバターまたはオリーブオイルをハケなどで鶏肉全体に塗ります。特に皮の部分に塗ることで、焼き色が綺麗になり、パリッと仕上がります。
- オーブンの温度を180℃に下げ、さらに40分〜1時間程度焼きます。竹串を太ももの付け根など厚みのある部分に刺してみて、透明な肉汁が出てくれば焼き上がりです。もし赤い肉汁が出る場合は、追加で10分ずつ焼いて確認してください。
- 焼いている途中で、鶏肉から出た肉汁や溶かしバターを再度塗ると、さらに風味と焼き色が良くなります。
- 休ませる:
- 焼きあがったらオーブンから取り出し、アルミホイルを全体にふんわりとかぶせて10〜15分ほど休ませます。こうすることで肉汁が落ち着き、切った時にパサつきにくくジューシーになります。
より美味しく、写真映えさせるポイント
- 盛り付け: 大きめの皿の中央にローストチキンを堂々と乗せ、周りに彩りよく焼き野菜を配置します。お腹から取り出したレモンやハーブも飾ると、食欲をそそる見た目になります。映画のように、少し荒削りながらも温かみのある雰囲気を意識すると良いかもしれません。
- 皮をパリッと: 焼き始めを高めの温度に設定したり、焼く前に皮全体にしっかりと油分(バターやオイル)を塗ることで、皮がパリパリに仕上がります。キッチンペーパーで水気を完璧に拭き取ることも重要です。
- グレービーソース: 天板に残った焼き汁と野菜の旨味を利用して、簡単なグレービーソースを作るのもおすすめです。焼き汁を小鍋に移し、小麦粉やコーンスターチでとろみをつけ、必要であればブイヨンや醤油で味を調えます。これを添えると、より本格的な味わいになります。
映画と料理の背景(ネタバレ注意)
※本項目には映画のネタバレが含まれます。
『ファンタスティック Mr.FOX』において、フォックスさんがローストチキンを盗む行為は、単なる食料調達以上の意味を持ちます。彼はかつて危険な盗み稼業から引退し、家族のために安全な生活を選んでいましたが、ある日、どうしてもやめられない「野生の本能」に駆られて、巨大で危険なボーギス、バンス、ビーンという3人の農場主から家禽やリンゴ酒を盗む計画を実行してしまいます。
このローストチキンを盗むシーンは、フォックスさんの抗いがたい本能と、それによって家族や仲間を危険に晒してしまう彼の葛藤を象徴しています。ボーギスの養鶏所からこっそりローストチキンを持ち帰るシーンは、彼の過去の栄光と、再び刺激的な世界に足を踏み入れてしまう瞬間の高揚感を表しているとも言えるでしょう。
しかし、この行動が引き金となり、動物たちは住処を追われ、農場主との全面対決へと発展していきます。この料理は、物語の大きな転換点であり、フォックスさんのキャラクターを深く掘り下げる重要な要素の一つとなっています。シンプルながらも強烈な印象を残すこのローストチキンは、映画のテーマである「内なる野生」や「自分らしさ」を探求するフォックスさんの物語と密接に結びついているのです。
まとめ
映画『ファンタスティック Mr.FOX』に登場するローストチキンは、単なる食事の描写にとどまらず、主人公フォックスさんの生き方や物語の展開に深く関わる印象的な存在です。
少し手間はかかりますが、ご自宅で丸鶏を焼くローストチキン作りは、特別な日のメニューにもぴったりです。こんがりと焼けた皮、ジューシーな肉から広がるハーブの香りは、食卓を華やかに彩り、作る過程も楽しむことができます。
ぜひ、このレシピを参考に、映画の世界観に思いを馳せながら、美味しいローストチキン作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。